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FUJIFILMの中判デジタルカメラ「GFX50SⅡ」を使ってみて|GFX50Sからの進化
こんにちは。フォトグラファーの栗原です。今回は私が趣味で使っているFUJIFILM中判デジタルカメラGFX50SⅡの実機レビューをお届けします。 また後半では建築写真撮影における50SⅡの立ち位置についても触れています。
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GFX50Sとの比較
GFX50Sからおよそ4年半の歳月を経た2021年9月29日に発売された50SⅡですが、センサーの画素数は変わらず約5,140万画素です。では何処に変化があったのか、見ていきましょう。
ボディ
50Sに比べると幅がわずかに大きくなり、ファインダーが着脱式から固定式となったことで高さは1cmほど小さくなりました。 奥行は-4.2mmとなっていますが、本体を手にするとボディの薄さに驚きます。
スペック表の奥行は計測している部分が両機で異なっており、「レンズマウント部から背面液晶までの厚み≒ボディの厚み」で計測すると-20mm(76mm→56mm)も薄くなっています。 カメラにおける2㎝のサイズダウンは驚異的です。おかげでかなり取り回しやすくなったと感じます。
※背面液晶の出っ張りはなくなりましたが、液晶画面自体は3方向チルト式の構造を継承しています。
また、ダイヤルなどのレイアウトも一新され、シャッタースピードダイヤルが消滅したことで、本体上部のサブ液晶画面も大きく見やすくなりました。 ダイヤルを見れば現在の設定(ISO/SS)が即座に把握できるという50Sの強みは、電源を落としても消えないサブ液晶画面が引き継いでいます(電力消費はほぼ無いそうです)。 従来のダイヤル操作をメインとしたクラシックな操作感から、所謂一般的なデジタルカメラの操作感になったといえるでしょう。その他USB-Cに対応していたり、バッテリーが大容量になったりと、順当な進化を感じます。
実際の数値比較
手振れ補正
最も大きな進化は手振れ補正機構の搭載です。50SⅡを購入するまで手振れ補正のあるカメラをしばらく触っていなかったこともあり、 そこまで期待していたわけではないのですが、撮影に持ち出すと6.5段の補正効果にひれ伏すこととなりました。 中判フォーマットにはF値の低い明るいレンズが少ないこともあり、周囲が暗くなるとシャッタースピードをなかなか稼げませんでしたが、 50SⅡの場合、SS1/15もあれば私の細腕でも概ね手振れしません(焦点距離と体調次第ではあります)
画像処理エンジン
画像を処理するプロセッサーも新型になりました。オートフォーカス性能が向上したようですが、コントラストAF方式のみ搭載なので、迷うときは迷います。 合焦しやすい位置でピントを取ってあげるように忖度が必要です。私の場合はマニュアルフォーカスレンズでの運用が殆どなので、幸いあまり気になりません。
センサー
50SⅡではセンサー上のマイクロレンズに設計変更がありましたが、写りに関して50Sとの明確な差は感じません。 しかし中判フォーマットの余裕ある諧調は相変わらず見事です。またGFXにはダイナミックレンジ拡張機能が搭載されており、 ISO200以上でDR200%、ISO400以上だとDR400%の設定が可能です。これはアンダーで撮影したのち、 内部処理でシャドウを持ち上げることによってハイライト部が白飛びしないようにする機能なのですが、 これをONにすると普段は白飛びするような空や照明から無限にデータが帰ってきます。
フルサイズカメラとのダイナミックレンジの比較
上の画像はDR拡張をON(DR400%)にしたGFX50SⅡとSONYミラーレス一眼のハイライト部の粘りを比較した1例です。 RAWで撮影後、ハイライトを-100,シャドウを+100しています。右の写真では蛍光灯が白飛びしていますが、GFX50SⅡの写真には諧調が残っています。 ハイライト以外は内部処理で持ち上げられるのでノイズが増えますが、個人的にはさほど気にならない程度なので大体ONにしています。
ローリングシャッター歪みについて
弱点も一つご紹介します。電子シャッター使用時のローリングシャッター歪みが大きめです。高速で移動する物体を狙ったり、カメラが揺れる状況で電子シャッターを使うと歪みが発生します。 センサーサイズが大きいこと、高画素機であること、そしてセンサーの読み込み速度があまり速くないことが原因のようです。 上の写真でも人物が細くなったり、引き伸ばされてやたらガタイが良くなったりしています。基本はメカニカルシャッターを使い、場面に応じて電子シャッターに切り替えるのが良いと思います。
建築写真に使えるのか?
建築写真に使えるのか否かという問題に関しては、ほぼ同じセンサーを搭載した先代GFX50Sのレビューで詳しく解説しています。 50Sは実際に撮影の現場で活躍していますので、50SⅡも変わらず活躍できると思います。ただしⅡで進化した部分は、ボディのスリム化や手振れ補正機構の搭載など、 より気軽に中判フォーマットを持ち出せるようにするものでした。建築写真の撮影は基本的に三脚を構えて構図を追い込むので、今回のアップデートは恩恵の少ないものになっています。
真打・GFX100S
と、ここまで50SⅡの紹介をしてきましたが、実は50SⅡに先立つこと7か月、2021年2月25日にGFX100Sという兄弟機が登場しています。 実はこの機種こそが建築撮影におけるGFXシリーズの真打です。GFX100Sは見た目こそ50SⅡと変わりませんが、1億画素の新型中判フォーマットセンサーを搭載したフラグシップモデルで、 その豊富な画素数が建築写真撮影に大きなアドバンテージを生みます。
35mmフォーマットモード
イエフォトの撮影ではキヤノンのシフトレンズ「TS-E17mm F4L」を多用します。 GFXに装着すると35mm換算で13mm相当の超々広角レンズになるので、特殊な場合を除き35mmフォーマットモードを使って17mmの画角のまま撮影したいのが本音です。 しかし50SⅡを35mmモードで使用すると、約3000万画素(6768px × 4512px)までトリミングされてしまいます。弊社の基本納品サイズは長辺6000pxなので、768pxしか余裕がありません。 TS-E17mmのような単焦点レンズでの撮影は、トリミングを前提としてカメラの位置を決めることもありますので、このピクセル数では若干心許ないところがあります。
GFX100Sの場合はどうでしょうか。1億画素での35mmモードは約6000万画素(9552px × 6368px)となり、短辺が納品サイズの長辺を上回るサイズです。 これだけの余裕があれば、普段は6000万画素の17mmで撮影を行い、飛び道具的に1億画素の13mmを開放する使い方が可能です。もちろんダイナミックレンジは中判フォーマットの豊かな諧調のまま。うーんロマンです。
普段から1億画素を活かしたい場合は、GFレンズ最広角のGF23mmF4 R LM WRを常用(35mm換算約18mm)にし、シフト撮影や超広角の撮影を行うときにだけTS-E17mmを使うのが良いかもしれません。 そのほかいろいろ活用法がありそうで夢が膨らみます。
価格
なんだかGFX100Sの紹介になってしまいましたが、最後に価格について見てみましょう。
50Sとの性能差を鑑みると50SⅡ&100Sは破格です。50Sが発表された当初も中判フォーマットのデジタルカメラで70万円は破格の安さでしたが、 50SⅡ・100Sに関しては性能が向上したうえにそれを下回る、また近しい金額であり、富士フイルムには足を向けて寝られません。 他メーカーのハイエンドフルサイズ機と価格感・サイズ感が変わらないので、中判機を普及させんとするという富士フイルムの強い思いを感じます。
GFXの購入にあたっては、50SⅡと100Sで大いに悩みました。趣味での使用がメインであること、そこまでトリミングをしないこと、そして価格を鑑み、自分にとってバランスのよいGFXは50SⅡだという結論に至りました。 しかし借りた100Sで撮影した1億画素の写真には、撮影時に見えていなかったものはもちろんのこと、感じてすらいなかった情緒までもが写っていたことは確かです。100Sは想像を超えた世界を開く鍵になりえるカメラです。
機能は限られるも最安の50S、手振れ補正と薄型ボディの50SⅡ、1億画素の100S。
みなさんならどのGFXにするでしょうか?